はじめまして、マックアンドサンクの吉田です。

弊社では現在、ベトナムに進出する企業のお手伝いをさせて頂くと共に、現地企業と合弁で3社の経営に携わっています。そこでは、ベトナムの様々な地域・業界・会社・役職の人々と、また100名以上のスタッフたちと日々向き合うこととなりますが、それは日本と異なる価値観・慣習との戦いでもあります。

昨今、「アジアを取り込め」と盛んに見聞されますが、過去15年間のベトナム人との付き合いからビジネス成功の要は「取り込む」のではなく「溶け込む」事が最も大切なのではないかと学びました。

このコラムでは、ベトナム進出支援の情報として直接的なお役には立てませんが、日本にはなかなか伝わってこないベトナム社会での出来事・現象を通じてベトナムという国、また愛すべきベトナム人の良い面、悪い面をお伝えしていきたいと考えています。このコラムを通じて少しでもベトナムという国に溶け込んでいただき理解を深めて頂ければ幸いです。

▼「こんなに沢山アパート造ってしまって一体誰に売ればいいの?」という悩み…
ベトナムでこのところ新聞紙上を賑わしている「普通の人にとても買えないような売値の住宅を沢山建てたものの、景気が悪くなって買う人がいない、一体どうすればいいの?」と言う話題。

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※ホーチミン市内1区 目抜き通りから一本入ったこのプロジェクトは、もう2年近く止まったまま

好景気に舞上がっていた頃は、皆、銀行から高い利子で資金を借りて、自分で住む為では無く将来の値上り・転売での利益を見越して、また他人に貸して収入を得る事を目的に20万ドルくらいするアパートを大きな借金をして買っていました。

勿論ベトナムでは基本的に全ての土地はお国の物、外国人は家を買う事は一部の例外を除き出来ません。

プロジェクトがまだ少ない頃は当然良い儲けがありましたが、それも束の間 売物件は増え続け、価格も高止まり、転売の利ザヤ稼ぎも難しくなり、貸すにも借手の数が限られている(借手の多くは外国人)。なかなか簡単には行かなくなりました。

そこで当然売れなくなり、建てている側の資金が廻らなくなる。何故かといえば集合住宅プロジェクトは、現地にまだ何も建たないうちからモデル・ルームを作って販売し、現金を得て、その資金で次の建設を進めていくからです。銀行からの資金の調達金利も高く利子負担も激増するため、売行不振は即ちプロジェクトが止まることを意味します。

そんなこんなで、サイゴン、ハノイの周辺には建築途中で放置された集合住宅の残骸が建ち並ぶ状況となりました。

政府はこれを何とかしなきゃ、バブルがはじけて日本みたいな状況になる、どうしよう?という困った状況が続いているのが2011年から2012年です。

少しでもまともにこの件を考えれば、平米当たりの販売単価が$2000なんていう住宅がそんなに沢山売れるのか、という素朴な疑問に気付くはず、もともと買い手がいない市場に高価なものを建てて売ろうとするのだから無理な話でした。

▼さてどうしたものか?
まずは月収1000ドルクラスの人が普通に買える住宅を開発、計画することをしなければならないと思います。必要であれば現在進行がストップしているプロジェクトの用途を変更するなど、かなりの荒療治が必要かもしれません。購入者の為に、日本で言えば住宅金融公庫のような、長期・低金利の金融システムを作りサポートすることも必要です。(果たしてベトナム人が20年、30年という様な長期のローンを組む気があるかは別問題として)

普通に働く今のベトナム人、特に都市部で働く人たちに「お金があったら何がほしい?」と聞けば100%「自分の家」と言う答えが帰ってきます。しかし正直なところでは、皆、自分の住宅を持つ事は一生かかっても不可能だと半ば諦めています。買うための具体的な可能性が全く見えないからどうしていいのか判らない、働いてお金を貯めるにしても一体いくら貯めたらどの程度の家が手に入るのか想像出来ない。働くことの目標が設定できずに、意味が見出せない、これはとても悲しいことです。

その事が都市部に棲む人たちの、ある意味刹那的な生き方、携帯やスマフォをどんどん新しい物に替えていく、バイクを新しくする、といったような消費の仕方になって現れているのかもしれません。

もし、月収1000ドルクラスでも住宅を持つ可能性がある、そう気がつけば頑張ってそこまで、という人達も出てくるでしょう。そして次には月収600ドルクラスの人達にも可能性を、と拡げていけるシステムとして持続的に実行して行く事が出来れば、ベトナム人の住宅に関する考えも随分と変わったものになっていくと思います。

結論は簡単な話になってしまいますが、普通の人が普通の生活をしながら買える可能性のある住宅を供給する、そんなプロジェクトに注力することです。

お金持ちの人が投機のために売り買いし、転売し、利益を上げる、そんな目的を主眼においたプロジェクトなど誰も相手にしない、そんな矜持を保つ、その価値を考えていくことではないでしょうか。

言葉で言うのは簡単ですが、現実の道程は本当に遠いと思われます。

さて今年2013年、ベトナムはどう動いていくのでしょうか、見て行くことにしましょう。

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